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バイオマスプラスチックとは?生分解性との違い・制度・コストの課題を初心者向けに解説

「急に会社のサステナブル推進プロジェクトのメンバーに選ばれ、環境配慮型パッケージの企画を任されてしまった……」

「上司から『うちの製品もバイオマスプラスチックに切り替えられないか?』と言われたけれど、普通のプラスチックとの違いがよく分からない」

このような悩みを抱える実務担当者は少なくありません。バイオマスプラスチックは環境配慮型素材として注目されていますが、導入を検討する際には、定義、生分解性との違い、法規制と表示制度、コスト、品質、廃棄方法まで正しく理解しておく必要があります。

この記事では、バイオマスプラスチックの基礎知識から、実務で確認すべき制度・注意点までを初心者にも分かりやすく解説します。上司や顧客への説明、社内企画、包装資材の見直しにご活用ください。

5分でわかるバイオマスプラスチックの基礎知識

自社の製品やパッケージに導入を検討する上で、まずは「そもそもバイオマスプラスチックとは何なのか」という基本を押さえておきましょう。

バイオマスプラスチックの定義と主な原料(トウモロコシ・サトウキビなど)

バイオマスプラスチックとは、「再生可能な生物資源(バイオマス)」を原料として作られるプラスチックの総称です。

従来のプラスチックは、地下から採掘される「石油(化石資源)」を原料として作られていますが、バイオマスプラスチックは主に以下のような植物由来の成分を原料にしています。

  • トウモロコシ(デンプン)
  • サトウキビ(廃糖蜜と呼ばれる砂糖の結晶を取り出した後に残る糖蜜)
  • ヒマシ油(トウゴマの種子から採れる油)
  • 木材・古紙(セルロース)

なぜ環境にいいの?「カーボンニュートラル」の仕組み

バイオマスプラスチックが「環境に配慮したエコな素材」とされる最大の理由は、「カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量が実質ゼロ)」という仕組みにあります。

従来の石油由来プラスチックは、燃やす(焼却処分する)と、大昔から地中に閉じ込められていた炭素が二酸化炭素(CO2)となって大気中に放出されます。つまり大気中のCO2が新たに増えます。

一方、バイオマスプラスチックも燃やせば同じようにCO2を排出します。しかし原料である植物は、成長する過程で光合成を行い、大気中のCO2をすでに吸収しています。

  1. 植物が成長するときにCO2を【吸収】する
  2. 製品として使われ、焼却時にCO2を【排出】する

このサイクルで見れば、大気中のCO2は新たに増えません。これがバイオマスプラスチックへの切り替えが進められている理由です。

【最重要】バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い

実務で最も混同されやすいのがこの2つです。バイオマスプラスチックは「何から作られているか」という原料に注目した言葉、生分解性プラスチックは「使用後に一定条件下で微生物により分解されるか」という機能に注目した言葉です。

別軸なので、掛け合わせると4つのグループに整理できます。

生分解する生分解しない
バイオマス由来PLA、PHA、PBSバイオPE、バイオPET
化石資源由来PBAT、PCL従来のPE、PP、PET

包装資材で流通量が多いのは右上(バイオマス由来だが生分解しない)です。また「生分解性=植物由来」でもありません。

項目バイオマスプラスチック生分解性プラスチック
定義の焦点原料。再生可能な有機資源を使っているか。使用後の機能。一定条件下で微生物により分解されるか。
主な原料植物由来の糖、デンプン、植物油、セルロースなど。石油由来のものも植物由来のものもある。
使用後の特性非生分解性のものも多く、通常のプラスチックと同様に回収・処理が必要。産業用コンポスト施設、土壌、海洋など、素材や認証に応じた条件下で分解する。
主な用途レジ袋、食品パッケージ、包装フィルム、日用品、容器など。農業用マルチフィルム、生ごみ袋、堆肥化処理と相性のよい用途など。

※これらを総称して「バイオプラスチック」と呼びます。中には「植物から作られていて、かつ土にも還る」という両方の性質を持った資材(バイオマス生分解性プラスチック)も存在します。

よくある勘違い:バイオマスだからといって自然に分解されるわけではない

「植物由来なら海や土に流出しても自然に消えるのでは」というのは誤解です。バイオPEやバイオPETのように従来のプラスチックと同じ分子構造を持つものは、通常のプラスチックと同じように長く残ります。

したがって非生分解性のバイオマスプラスチックは、使用後に適切に回収し、自治体や事業所のルールに従って処理する必要があります。海洋プラスチック問題への対応を訴求したいのか、化石資源使用量や温室効果ガスの削減を訴求したいのかによって、選ぶべき素材は変わります。

押さえておくべき表示制度の違い

表示制度の比較:JBPAとJORAは基準が違う

代表的な2制度は、運営団体も基準値も対象範囲も異なります。

バイオマスプラマークバイオマスマーク
運営団体日本バイオプラスチック協会(JBPA)日本有機資源協会(JORA)
対象プラスチック製品商品全般(食品・医薬品・粗製品は対象外)
基準値製品中のバイオマスプラスチック成分が 25.0重量%以上商品全体の乾燥重量に占めるバイオマス割合が 原則10%以上
申請条件JBPAの会員であることが必要会員要件なし。認定審査を経て使用契約を締結

評価している対象が異なる点に注意してください。 JBPAは制度上認められたバイオマス由来プラスチック成分を、JORAは商品全体に投入されたバイオマス原料を評価します。分母も、前者は製品中のプラスチック、後者は商品全体の乾燥重量です。25%と10%を単純比較することはできません。

「バイオマスマークを付けたい」と言われたら、どちらの制度か/基準を満たすか/誰の名義で申請するかの3点を最初に確認してください。

ビジネスに導入する3つのメリット

1. 石油資源の使用量削減とCO2(温室効果ガス)の排出抑制

最大のメリットは、製品のライフサイクル全体における環境負荷を劇的に低減できる点です。

有限な資源である石油の使用量を抑えられるだけでなく、先述した「カーボンニュートラル」の仕組みにより、焼却時のCO2実質排出量を大幅に削減できます。サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3など)の削減を国や取引先から求められている現代において、最も直接的で効果的なアプローチとなります。

2. 企業のESG経営・サステナビリティ対応としてのPR効果

現在、多くの大手企業や投資家は、取引先を選定する基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」への取り組みを重視しています。

パッケージや資材にバイオマスプラスチックを採用することは、「口先だけでなく、具体的な行動を起こしている環境配慮企業」である証拠になります。競合他社が従来の石油製品を使い続ける中で、いち早く切り替えを進めることで、グリーン調達を重視する大手企業からの新規受注や、差別化の強力な武器になります。

3. 「バイオマスマーク」の付与による消費者へのイメージ向上

バイオマスプラスチックを一定基準以上使用した製品には、一般社団法人日本バイオプラスチック協会(JBPA)が認定する「バイオマスプラマーク」もしくは一般社団法人日本有機資源協会(JORA)が認定する「バイオマスマーク」を表示することができます。

店頭に並ぶ商品パッケージにこのマークが印刷されているだけで、一般の消費者に対して「環境に優しい商品である」ことが一目で伝わります。企業のブランドイメージ向上はもちろん、エシカル消費(環境配慮型の商品を積極的に選ぶ消費行動)を意識する層への強力な購買フックとなります。

企画・開発前に知っておくべき2つの課題

1. 従来品よりコストが高くなりやすい

原料調達、製造量、加工条件などの面から、従来の石油由来プラスチックよりコストが高くなる傾向があります。特に配合率を高める場合や特殊な物性を求める場合は価格差が大きくなります。「環境対応をどこまで求めるか」と「許容できるコスト上昇はどこまでか」を整理し、まずは部分バイオマスから検討するのが現実的です。

2. 物性は「タイプ」で決まる

バイオマスプラスチックは種類によって事情が大きく異なります。判断の軸は、既存の設備や設計をそのままに原料だけを差し替えられる「ドロップイン型」か、そうでないかです。

  • ドロップイン型(同一物質型):バイオPE・バイオPETなど — 従来のPE・PETと化学的に同一の物質です。確認すべきは、現在使用中の銘柄に相当するグレードがあるかどうかです。
  • 非ドロップイン型:PLA・PBSなど — 従来樹脂とはまったく別の高分子です。耐熱性、衝撃性、シール性、加工条件のいずれも異なります。

つまり物性リスクの大きさは「バイオマス化するかどうか」ではなく、どちらのタイプを選ぶかで決まります。ただしドロップイン型でも、他樹脂とのブレンドや添加剤の変更を伴えば物性は変わります。シール性、破れ、変形、印刷適性などはカタログ情報だけでは判断できないため、実際の使用条件に近い形でのテストが不可欠です。

【実務向け】自社製品への導入を検討する3ステップ

ステップ1:目的を明確にし、打ち手を選び分ける

目的が曖昧なまま素材を選ぶと、コストだけが上がり、社内外にうまく説明できない企画になりがちです。「環境対応」と一括りにせず、目的に応じて打ち手が分かれることを押さえておきましょう。

目的有力な打ち手
化石資源の新規投入量削減バイオマスプラスチック/再生材(どちらも効果あり)
廃棄物の資源循環再生材(リサイクル材)の配合
リサイクル適性の向上単一素材化(モノマテリアル)
海洋流出リスクへの対応海洋生分解性素材、または回収スキームの設計
コンポスト処理との適合生分解性プラスチック
使用樹脂量そのものの削減薄肉化・軽量化、包装形態の見直し、詰め替え化

バイオマス化が最適解とは限りません。上司や取引先から「環境対応して」と言われたときは、まずこの表のどこを狙うのかをすり合わせてください。

ステップ2:配合率と表示制度を確認する

最初から100%植物由来を目指すのではなく、部分バイオマスから始める方がコストと品質のバランスを取りやすくなります。目標配合率を決める際は、レジ袋なら25%、バイオマスマーク取得なら10%など、制度の基準値を意識しましょう。あわせて、どのマークを使うのか、その基準を満たすのか、申請主体は誰かを確認します。

ステップ3:既存包装の仕様と現場条件をもとに見積もる

現在使用している包装資材の材質、厚み、サイズ、印刷有無、ロット、使用機械、保管条件、納入形態を整理したうえで、サプライヤーに相談します。

「バイオマス素材を扱っている」というだけでは不十分です。包装ラインで問題なく使えるか、シール不良や破袋が起きないか、コスト上昇をどこまで抑えられるかを、現場条件に合わせて確認する必要があります。サンプル手配から実機テストまでを含めたスケジュールとコストを見積もることが、失敗を防ぐ最大のポイントです。

バイオマスプラスチックに関するよくある質問

Q. 食料であるトウモロコシなどを使うと、食料不足に影響しませんか?

A. 初期のバイオマスプラスチックでは懸念されましたが、実際に使われているのは家畜用の飼料トウモロコシ、サトウキビの糖蜜、ひまし油などの非可食植物、木材といった原料で、世界の食料需給に影響を与えない工夫がなされています。

Q. 見た目や手触りは普通のプラスチックと変わりますか?

A. 素材によって大きく異なります。

バイオPEは従来のPEと化学的に同一の物質です。原料が違うだけで分子構造は変わらないため、同一グレードなら物性も同一です。バイオPETも同様です。

一方、PLAやPBSは従来樹脂とはまったく別の高分子です。透明性、コシ、シール適性、耐熱性のいずれも異なるため、必ず実物サンプルで確認してください。

Q. 可燃ごみとして捨てても大丈夫ですか?

A. 家庭用製品は自治体の分別ルールに、事業活動で使用した包装資材は事業所の廃棄物処理ルールや処理業者の指示に従ってください。バイオマスプラスチックであっても、非生分解性のものは通常のプラスチックと同様に適切な回収・処理が必要です。

まとめ:まずは「部分導入」から現実的に検討する

バイオマスプラスチックは、石油資源由来プラスチックの使用量削減や温室効果ガス排出抑制への貢献が期待される環境配慮型素材です。一方で、生分解性との違いや制度ごとの基準値を理解しないまま導入すると、現場トラブルや不適切な環境訴求につながるおそれがあります。

導入を成功させるポイントは3つです。

  1. 目的を先に決める — バイオマス化が最適解とは限らない
  2. 部分バイオマスから始める — コストを抑えつつ環境対応する
  3. 表示制度を確認する — どの制度で、どう表示し、誰の名義で申請するか

そのうえで既存包装の仕様、使用環境、必要物性、コスト許容範囲を整理し、現場条件に合う素材を選ぶことが重要です。

参考・関連リンク

  • 日本バイオプラスチック協会(JBPA)/識別表示制度
  • 日本有機資源協会(JORA)/バイオマスマーク
  • 環境省ほか/バイオプラスチック導入ロードマップ

※制度の基準や運用は改定される場合があります。実際の申請・表示にあたっては各団体の最新情報をご確認ください。

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