【前編】バイオマスプラスチックとは? 定義・種類・バイオプラスチックとの違いを徹底解説
地球環境への関心がますます高まる中、私たちの生活に深く根付く『プラスチック』は、今、環境負荷を見直す転換期を迎えています。
本コラムでは、環境に配慮した新しいプラスチックの形として注目されている「バイオマスプラスチック」と「バイオプラスチック」について、その違いや特徴を前後編の2回に分けてわかりやすく解説します。
前編では、まずそれぞれの用語の意味や成り立ち、そしてバイオマスプラスチックの種類や基本的な特徴についてご紹介します。
◆バイオマスプラスチックの概要
環境配慮型プラスチックの1つとして、注目を集めているのが「バイオマスプラスチック」です。
「バイオマス」とは、「bio=生物・生命」と「mass=質量」を組み合わせた言葉で、本来は生態学で“単位面積当たりに存在する生物の総重量”を指す用語ですが、環境分野では植物などに由来する再生可能な有機資源を意味することが一般的です。つまり、「バイオマスプラスチック」とは、サトウキビやトウモロコシなどの植物由来の資源から作られたプラスチックを指します。
一方で「バイオプラスチック」という言葉もよく使われますが、これは「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック(微生物によって水とCO₂に分解されるもの)」の総称です。よく混同されますが、植物由来であることと生分解性であることは、必ずしも一致しません。
例えば、
PLA(ポリ乳酸)…植物由来で生分解性をもつプラスチック
バイオPE…植物由来で生分解性をもたないプラスチック
PBS…石油由来で生分解性をもつプラスチック
とそれぞれ独立した性質であるため、要求品質に対して「何由来か」と「分解性があるか」を正しく理解した上で素材を選ぶことが重要です。
◆バイオマスプラスチックの2つのタイプ
バイオマスプラスチックは大きく分けて以下の2タイプに分類されます:
① 基礎原料タイプ(化学構造が石油由来プラと同じ)
通常、プラスチックは石油を精製して得られるナフサを熱分解し、エチレンやプロピレン、キシレンといった基礎原料を生成し、それらをさらに化学反応させてペレットと呼ばれる直径数ミリの粒状のプラスチック原料となります。基礎原料タイプは、この“基礎原料”をバイオマスから生成する方式です。
たとえばポリエチレンの製造では、
• 石油由来:石油 → ナフサ → エチレン → ポリエチレン
• バイオマス由来:サトウキビ等 → エタノール → エチレン → ポリエチレン
という流れになり、完成したポリエチレンの性質は化学式レベルで同一になります。
この方式は、従来の設備・製造ラインをそのまま活用できる点、性能・品質面で従来品と変わらない点が大きなメリットです。バイオマス原料としては、糖を多く含むサトウキビやテンサイ、でんぷん質を多く含むトウモロコシやイモ類などが使われます。
② ブレンドタイプ(石油由来プラにバイオ素材を混合)
石油由来プラスチックのペレットに、植物由来の粉体や繊維などを混合して成形して作られたプラスチックです。使用されるバイオマスとしては、米ぬか、非食用米、コーヒーかす、茶殻、竹、スパイス残渣などがあり、バリエーション豊かです。
このタイプは、抗菌・消臭・鮮度保持など、従来のプラスチックにはない機能性をもつことが多く、環境対応だけでなく「付加価値素材」としての活用も注目されています。ただし、混合比率を高めすぎると強度や成形性が低下するため、高いバイオマス度での製品化はハードルが高いです。
◆バイオマス度・制度面の違い
基礎原料タイプは理論上100%バイオマス由来にすることが可能ですが、原料コストが高いため、数%~数十%を石油由来プラスチックに混ぜて成形することが主流です。
ブレンドタイプは、重量比でバイオマスを50%以上含めることで、「法律上はプラスチックと見なされない」扱いとなり、プラマーク表示が不要になるケースもあります(*1)。対して、基礎原料タイプは「化学構造が石油由来と同じ」ため、たとえ100%植物由来でもプラマーク表示が必須になります。
*1:ブレンドタイプでは、混合比率や機能によっては「容器包装リサイクル法上のプラスチック製容器包装に該当しない」と判断される場合があり、その場合はプラマークの表示対象外となる可能性があります。ただし、判定には成形性・使用用途などの複合的要素が関与するため、詳細な判断は関係省庁にご確認いただくことを推奨いたします。
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今回は、バイオマスプラスチックの基本的な種類や構造、制度上の違いについてご紹介しました。では、こうした素材は本当に“環境にやさしい”のでしょうか?
次回の後編では、環境への影響、導入における課題、将来展望と企業の取り組みについて詳しく掘り下げていきます。
環境と共存する未来のために、プラスチックとどう向き合うべきかを考える契機となれば幸いです。どうぞ次回もお楽しみに。

